将軍様、あなたのために映画を撮ります あらすじ
1978年、相次いで北朝鮮に拉致された韓国の国民的女優・崔銀姫(チェ・ウニ)とその元夫で映画監督の申相玉(シン・サンオク)。
映画で国威掲揚を狙う金正日に命じられ映画を制作させられる。
1986年にアメリカに亡命するまでのふたりの数奇な運命を、関係者の証言や金正日の肉声テープを通して明らかにする。
将軍様、あなたのために映画を撮ります 感想
映画以上に映画的。
再現ビデオのように映画のシーンが挟まれるのが面白い。
ほのぼのドラマのような邦題をつけられているが、始終緊張感のある硬派ドキュメンタリーだ。
ただ、どの写真や映像がホンモノで、再現なのかが分かりづらいのは実録としては難があると言えるかもしれない。
申監督はこのドキュメンタリー撮影時はすでに亡くなっていたので、テープしか残っていないが、その肉声がなぜか日本語で、ネイティブ並みの流暢さで驚いた。
日本統治下の東京芸大を卒業されているそうだ。
申相玉らは83年からの約3年間で17本の作品を制作し、その中には日本でも公開された『プルガサリ 伝説の大怪獣』や、チェコ国際映画祭で受賞作となった『帰らざる密使』などもあったそう。
以下、印象に残った部分(文章は適宜改変)
北朝鮮には映画祭に出品できるレベルの映画がない
南が大学生レベルだとすれば北は幼稚園レベル
新たなものを受け入れようとしない
見せられた映画は『女狙撃兵マリュートカ』
裏切ったら殺すという意味だった。
極限状態になると、映画に出てくることまで真似したくなる。
これを映画に撮る場合はどう撮ろうかなって、そういう事ばかり考えている
再会のとき、映画なら抱き合って泣くところ
現実は、何も言わずに見てニコニコ笑うだけ。
北朝鮮は資金の心配もしなくてよく、思想を押し付けることなく自由に映画が撮れた
南(韓国)は政権の圧力で自由に撮れないしお金にも苦労した
どこに自由があるのか
表面的な自由しかない
一見、良いように思える北朝鮮の暮らし。それは宣伝に利用価値のある特権階級だからこそ。
用なしになったらどうなるかわからない。
大使館に向かって走っているのに、スローモーションのように進まない、映画みたいに
自分の映画を作るなら、苦労したシーンは入れない
輝かしいシーンだけ撮る、何度も死線をさまよって辛かったから
自由な国こそが素晴らしいのだろうか。
資本主義、民主主義に真の意味での自由はあるのだろうか?
お金があってこその自由ではないか。
北朝鮮版タイタニックとして撮影された『生きた霊魂』(キム・チュンソン監督)
北朝鮮以外で上映されることはなかったそうだが、ちょっとだけ流れる。
工作~黒金星と呼ばれた男~でも、マイクロカセットで録音するシーンは出てくるが、それも大変だったのではないかと思う。
テープがなければ、この二人の証言は信じてもらえなかったし、あったとしてもまだ疑っている人も居るという。
拉致被害者のことも考えずにはいられない。
北朝鮮に生まれてしまった人々も気の毒だ。
しかし日本もなんだかそれに近くなりつつあるような気がして怖い。
見て良かった。
将軍様、あなたのために映画を撮ります 映画情報
公開年:2016年
上映時間:97分
原題:THE LOVERS AND THE DESPOT(恋人たちと独裁者)
監督:ロス・アダム、ロバート・カンナン
将軍様、あなたのために映画を撮ります キャスト
チェ・ウニ
シン・サンオク