ペパーミント・キャンディ あらすじ
1999年春、20年ぶりに集まるピクニックに場違いなスーツ姿で現れたキム・ヨンホ(ソル・ギョング)。
人生に絶望した彼は、向かってくる列車の前に立ちはだかった。「やりなおしたい!」
結婚生活や切ない初恋、兵士として遭遇した光州事件、そしてもっとも美しかった20年前へ、記憶を逆行させていく…。
ペパーミント・キャンディ 感想
ずーんとくるものがある。自分が戻りたいのはいつの時点だろう?
印象的なペパーミント・キャンディというタイトルだが、現代は박하사탕(ハッカ飴)。
昔ながらの飴で、ドラマ屋根部屋のプリンスにも出てくる(主人公のパク・ハはハッカと同音)
庶民にとってありふれたごく普通の飴が、この映画内では変わらない物の象徴として使われている。
なぜかNHKも制作投資に絡んでいるが、特に日本が関連する描写はない。
音楽が全体的に良いのだが、ベテランや元カレは天才詐欺師でも使われた、『나어떡해(僕どうしよう)』が特に印象的に使われていた。
物語は、ソルギョング演じるヨンホが、スーツ姿でぐにゃぐにゃになりながら、ピクニック集団に紛れ、半ば迷惑がられている場面から始まる。
そしてやおら、高架に登り、電車の前に立ちはだかる。
ピクニックの集団は、20年ぶりに再会する旧知の仲だが、おかしな行動をするヨンホに呆れて相手にしない。
一人だけ、心配げに声をかけてくれるが、かといって無理やり引き留めるわけでもない…。
この、実にリアルな、見ていて自分の身を振り返りヒリヒリするような感覚。
다시 시작하고 싶다! やり直したい!
나 다시 돌아갈래! 僕は戻りたい!
そう叫んで、電車に飲まれていく…
その後、映画は、線路の進行方向をを逆再生し、ヨンホの過去の記憶に戻っていく。
3日前、1994年夏、1987年春、1984年秋、1980年5月(光州事件)、そして1979年秋で終わる。
彼がそこまで追いつめられるまでに、何があったのか、何が原因でこうなってしまったのか、戻るべきはどの時点なのか?
当時おそらくソル・ギョングはジャスト30歳くらい。
20代のピュアな青年から、40代のやさぐれたおっさんまでを演じるのだが、その演じ分けと表情は本当に天才的としか思えない。
本当に、そういう風にしか見えないのである。
一人の男の一代記を描いた映画としては、『国際市場で逢いましょう』も秀逸だが、この映画もまた違った味わいで、韓国の現代史に翻弄された男の人生をたどっることができる。
この映画は、韓国の映画サイトを見ると、PTSDを扱った映画としても分類されている。
タクシー運転手でも描かれた光州事件だが、制圧する側の軍人も、また心に深い傷を負ったということだろう。靴に水が入ったの表現は痛烈だ。
ただ、その後でも、ヨンホは何度もまっとうな道を進める分岐点があったにもかかわらず、道を誤り、通貨危機など時代も味方してくれなかったのだろう。
振り返って自分も、さすがに人を撃って殺した経験こそないが、ヨンホが「戻りたい!!!!」と線路の上で叫ぶ気持ちが痛いほどわかる。
どの時点に戻りたいだろう、、自分にとっても河原のピクニックだろうか?しかしあのときあの男を選んでいたら、それはそれで嫌だな・・・と思ったり。
話を映画に戻すが、ヨンホも、20年前の河原に戻って、カメラマンを志し、ムン・ソリ演じるスニムと結ばれていたら今の事態は避けられたのだろうか。
本当にそうだったのだろうか?
なんとなく、自分は、結局ヨンホはどっちにしろ破滅していたんじゃないかと思えてならない。
20歳を演じるソルギョングがピュアな美形でびっくり。
じわじわと胸に来る傑作とは思うが、中盤少し飽きてしまった。
オアシスのほうが話が可愛らしくて好きだし、バーニングは余白が多いが飽きずに見入ってしまった。
とはいえ、イ・チャンドン監督作品をおさえておくには必見の一作。
ペパーミント・キャンディ 映画情報
公開年:1999年
上映時間:130分
原題:박하사탕(ハッカ飴)
監督:イ・チャンドン
ペパーミント・キャンディ キャスト
ソル・ギョング:キム・ヨンホ
ムン・ソリ:ユン・スニム、ヨンホの初恋
キム・ヨジン:ヤン・ホンジャ、ヨンホの妻
パク・セボム:シン・クァンナム、スニムの夫
ソ・ジョン:ミス・リー、家具店職員、ヨンホの愛人
コ・ソヒ:キョンア、群山の喫茶マダム
イ・デヨン:カン社長
パク・キルス:カリボン蜂友会
コン・ヒョンジン:ソン刑事
チェ・ドンムン:労組員
キム・ギョンイク:パク・ミョンシク、拷問を受ける学生