トガニ 幼き瞳の告発 あらすじ
恩師の紹介で聴覚障害者学校に赴任することになった美術教師のカン・イノ(コン・ユ)。赴任先の学校は、どこか異様な雰囲気に包まれていた。ニコニコと人当たりはいいが目の奥で人を窺うような不気味な校長、そして教職に就くための不正な金を平然と要求してくる校長と瓜二つの双子の弟。何より生徒たちのおびえたような表情に違和感を覚えるイノ。職員室で平然と生徒を袋叩きにする男性教師、稼動している洗濯機の中に女生徒の顔をおしつけるという常軌を逸した暴行を加える女寮長・・・。怒りを覚える中、女生徒から聞き出した新たな事実は、複数の生徒たちが校長をはじめとする教師たちから、日常的に性的虐待を受けているというあまりにおぞましいものだった。 怒りに燃えるイノはユジンらと共に、マスコミの力を利用し真実を暴くことを決意する・・・
トガニ 幼き瞳の告発 感想
つらいけど、見ておくべき作品。
以前からこの映画のすごさは知っていたが、あまりにも重そうな内容に、尻込みしていた。
ABEMAの深夜映画でやっているのを知り、酔った勢いで、見るなら今しかない、と思って見た。
見たのは正解だ、だがあまりにも辛い。。
この映画が現実をもとにしていて、現実を変えるために作られた映画だからだ。
2005年に光州で実際に起こったものであり、地元の権力者対弱者。
軽い量刑、それに怒った作家が小説化し、それを兵役中に読んだコン・ユが映画化を後押ししたという。
そしてこの映画によって法律が変わり『トガニ法』と呼ばれ
犯人の一人は懲役8年、個人情報公開10年、電子足輪10年の刑が科された
また、何の処罰もされずにいた校長は、ガンで死んだそうだ。
事件を明るみにするため、協力したテレビ番組は、『提報者 ES細胞捏造事件』の時に出てきたMBCのPD手帳だという。
この映画はマスコミについては全面に出していないが、警察も法も頼れない場合、最後まで庶民の味方であるのははマスコミである。
そのために存在する。
スポンサーや圧力に屈しないで報道できる健全性を保ってほしい。
犯行をした校長と教員は許せないのはあたりまえ(チャン・グァン好きだったのに嫌いになりそうなくらい)
権力と金の力でもみ消そうとする周囲ももちろん許せない
こいつらは悪いことをしている自覚はあるにはあるのだろうか
「最後に正義は勝つ」などとほざいているのでわからないが・・・
この映画で自分が一番怖かったのは・・・
讃美歌を歌って好調を擁護している人たち、韓国でよく見るが
ES細胞捏造事件でも、可愛くデコったプラカードを持って博士を擁護する訴えをしている女子高生。
そういう、悪を正義と信じて疑っていない、純粋な善意の人たちだ。
批判をすると「がんばってるのに、なんで足をひっぱるようなことをするの?」と本気で思っている人たち
これが結構多いという恐ろしさ
この人たちに現実を知らしめるのは容易ではない。
それにこの『トガニ』や、『ソウォン/願い』など、弱者が虐げられた現実を知らしめるための映画をつくると
「被害者の子どもがこの映画を見たらショックだろう、プライバシーはどうなっているのか」
のような頓珍漢な善意発言をする人。
一生消えない傷を背負ったのに、法が変わらないから、勇気をもって子供たちが訴えてるのに
なぜ映画が作られたかの意図を汲まない人。
日本でこういう映画が作られないのは、被害者への配慮というより、そういう意見が出てくるのを配慮しすぎるからだろうか。
重い内容の割には、エンタメ性や息抜きタイムも挿入されており、思っていたより見やすかった。
誰にでもおすすめできるわけではないかもしれないが、見ておいた方がいいと思う一作。
映画は現実を変えることができる。
トガニ 幼き瞳の告発 映画情報
公開年:2011年
上映時間:125分
原題:도가니(トガニ=坩堝)
監督:ファン・ドンヒョク
トガニ 幼き瞳の告発 キャスト
コン・ユ:カン・イノ、美術教師
チョン・ユミ:ソ・ユジン、ムジン(霧津)人権運動センター
キム・ヒョンス:キム・ヨンドゥ、慈愛学院生徒
チョン・インソ:チン・ユリ、慈愛学院生徒
ペク・スンファン:チョン・ミンス、慈愛学院生徒
チャン・グァン:慈愛学院校長、行政室長、双子の二役
キム・ミンサン:パク・ポヒョン、慈愛学院教師
イム・ヒョンソン:チョン・ヨンフン、ムジン(霧津)人権運動センター
キム・ジュリョン:ユン・ジャエ、慈愛学院生活指導、理事長の養女、校長の愛人
オム・ヒョソプ:チャン・ハムン刑事
チョン・ググァン:ファン・ウシク、弁護士
チェ・ジノ:検事
キム・ジヨン:イノの母
パク・ヘジン:校長の妻
オム・ジソン:チョン・ヨンス、ミンスの弟
ナム・ミョンニョル:キム・ジョンウ教授、イノの大学恩師
チャン・ソヨン:手話通訳士
ホン・ソギョン:慈愛学院守衛